階段をおりて、金彩のカップ

階段をおりて、ごきげんようと言いたくて。

階段をおりる⑨10月下旬15:55

お茶飲みすぎて気持ち悪い。。

この日2回目の帰宅は、金澤さんに相談して、初めてのカーテン席。

わたしが玄関前の階段を上ってから、だいぶ溜めて、ドアを開けてくださったのは

初めて担当いただくおじさま。ストイックそうなお顔つきの、吉川さん。

そして後ろに控えていらしたのは、



「水瀬と申します」



背が高い!!
こちらが噂のチョコミントさん!!



水瀬さんはカーテンを少し捲って、座る席を左右いずれか選ばせてくれた。その手の綺麗なこと。



チーズケーキはまだあるかしら、と聞いたら、聞きに戻ってくださって、



「フットマンケーキ、まだございます」



と、自分のことのように嬉しそうな笑顔でお伝えくださって、うわあ、可愛いひとだな。
お茶はいつものフェイラン、カップはゴールドの面積の大きいものをリクエスト。

2人席は小さなシャンデリアがあって、壁際に洋書が数冊。カップの紹介やマナー本といった、ありがちなものはパラパラめくって閉じた。
1冊だけあった小説を読むことにした。久し振りに英語脳になる。

しばらく待っていたら、カーテンが揺れた。



「失礼いたします。
 …水瀬が小さくなりました」



違うフットマンが、お茶を運んできた。
ちょっと止まってしまって、曖昧に笑う。



「申し訳ございません。水瀬がお化けに捕まっておりまして、代わりにお茶を持って参りました」
「まあ、大変なのね。
 小さい水瀬さん、お名前は?」
「小さい水瀬、でもよろしゅうございます、が、杉村と申します」
「あ、シルヴィアスのひと!」



杉村さんはいつだかお見かけしたけれど、髪型が記憶と違うから分からなかった。
シルヴィアスはキームンベースで、あまりブレンドティーを飲まないわたしも、美味しいと思えるお茶だった。



「はい、"シルヴィアスのひと"です」



今度は向こうがおかしそうに笑って、丁寧な手つきでお茶を出してくれた。



「ゴールドのカップを!と水瀬から言付かっておりましたので、名前にも入っております、ルネッサンスゴールドをお持ちいたしました」



使ったことのない"寸胴"のカップ。ハンドルもおしゃれ。



お化けから開放された水瀬さんは、しばらくしてケーキを持って現れた。水瀬さんは声が低くなくて、どことなく中性的な雰囲気がある。ミッチーみたい。



「お召し上がりになりましたら、佐々木にも感想を伝えてやってくださいませ」
「え、お顔分からない……」



なんて話をしていたら、後ほどお声掛けくださったらしく、佐々木さんがご挨拶にいらしてくれた(はずかしかった)。

これまで、目も悪いし、佐々木さんと鹿野さんと才木さんの見分けが付かなかったのだけれど、この日やっと近くでお話して、違いが分かった。

ブルーベリーのケーキは口溶けが良くて、チーズの酸味が強すぎなくて、とても美味しかった。



吉川さんは、オフィスでネクタイを締めていそうな、いい意味で地上の似合うおじさま。長髪の紳士もいれば、女の子と見紛う青年もいて、屋敷はなんて多様な使用人を雇っているのだろうと驚く。

お名前を訊く、というスキルを身に付けて、レベルアップしたティータイムでした。





ドアマン:金澤さん→時任さん
執事:吉川さん
フットマン:水瀬さん
お世話いただいた方:杉村さん、八幡さん、鹿野さん
お見かけした方:緑川さん、佐々木さん、他お名前不明
お食事:ギフトボックス(スコーン)、フットマンケーキ(佐々木さん)
紅茶:フェイラン
   (紅茶係:浅葱さん)
カップウェッジウッド ルネッサンスゴールド