階段をおりて、金彩のカップ

階段をおりて、ごきげんようと言いたくて。

階段をおりる㉔2月上旬12:00

時間どおりに着いたのに、時間をだいぶ過ぎて案内された。
声が枯れ気味の藤原さんが立つ玄関から、暖かいサロンへ入ると、その理由が分かった。




月の始まり。
フットマンたちは新メニューの紹介に忙しい。
環さんなどは、お給仕しながら、ページボーイの指導もしていた。
おそらく"お嬢様"の半分はウェブサイトのメニューをご覧になってから帰宅されているから、そこまで丁寧でなくてもいいのに、と、やや申し訳なく思ってしまう。
初めて担当いただいた能見さんもまた素晴らしい笑顔で、メニューを丁寧に説明してくださった。

お水を待っている間、フロアをぼうっと見ていると、大人数卓の担当らしい日比野さんがワゴンを押していた。こちらに気付くと、口パクで「おかえりなさいませ」と言ってくれた。

限定紅茶は香水みたいに華やかな香り。でもわたしの好みではなかった。
2月からアッサムの新しい茶葉が入って、名前もヴァサンティではなくなっていたので試してみたかったけれど、次の機会に。午後の空席が多かったので、もう一回帰宅できるかなと思って。

能見さんとはシャンパーニュの話を軽くできたので嬉しかった。笑顔を絶やさないのが本当に素晴らしい。

日比野さんは隣の卓の担当なのに、全く話しかけてもらえなかった。それほど忙しなかったのだろう。
もしかして嫌われてしまったのかな、とも、小指の先ほど考えてしまったけれど、彼らからしたら、わたしたち"お嬢様"はお客さんだものね。お客さんが嫌いだなんて、よほど迷惑なことしない限りないよね、と思い直した。

隣の”お嬢様”をお化粧直しに連れていかれて、戻ったタイミングでこちらへ来ようとしてくれたようだったけれど、ちょうどそのとき、香川さんがわたしに時間を告げた。しかたなく、席を立つ。

「いってらっしゃいませ」と、香川さんの真横で声をかけてくれた日比野さんは申し訳なさそうな顔をしていたけれど、わたしはこの1時間強の寂しさから、いかにも恨めしそうな視線を送って、変な笑顔を作ってうなずいた。年始の、杉村さんに担当してもらったときにも同じように機嫌を悪くしてしまったから気を付けないと、と思って、言葉には出さなかった(それでも申し訳ないと思っている)。

たぶん好きではないの。お友達みたい?弟みたいに思っているのかな。
彼は、2歳年下の妹に少し似ている。





ドアマン:藤原さん!→金澤さん
執事:香川さん
フットマン:能見さん
お世話いただいた方:綾瀬さん、ギフトショップで的場さん
お見かけした方:椎名さん、環さん、百合野さん、隈川さん、浅葱さん、胡桃沢さん、鹿野さん、日比野さん!、他もう一人お名前不明
お食事:ダ・ヴィンチ(バジルのチーズクリーム)
紅茶:Volutes de Capucines(限定紅茶)
カップウェッジウッド フロレンティーンゴールド