階段をおりて、金彩のカップ

階段をおりて、ごきげんようと言いたくて。

階段をおりる③10月上旬12:00

帰宅の日はいつも天気が悪い気がする。
お気に入りの日傘を雨で濡らしながら、今回こそオンタイムで帰宅。

ドアマンは香川さん。

1つ前の組の"お嬢様"方を迎え入れるところだった様子。奥から嘉島さんの出迎えの声が聞こえて、少しだけ羨ましかった。嘉島さんは可愛い。

間もなくわたしがドアを潜る番になる。香川さんに促されて、左手の扉の前に立つ。3度目ともなれば、躊躇せず、2段の階段を上がりきって。



「おかえりなさいませ」



執事は時任さん。濡れた傘を渡しながらも、腰までの長髪を視線から外せない。

フットマンの隠岐さんは……色白でややがっちりした、貴乃花に似た顔立ちのお兄さん。
これまで担当いただいた3人のフットマンの中では、一番好みの見た目かもしれない。



が!



「お荷物置かせていただきますね」
「ただいまお品書きをお持ちしますね」



ね!! 気になる!! 笑
フレンドリーなのかしら。緊張してるのかしら。

サロンの階段をおりて、向かって右手奥から2番目の壁際のお席。暖炉のハロウィーン装飾が賑々しい。

いつもよりクラシックの音が大きく聞こえると思ったら、スピーカーの近くの席だった。
隠岐さんの声が聞こえにくいときがあって、小さいのかと思ったら、なるほど、席にはこういう当たり外れもあるのね。

しかし、隠岐さんにはよく構っていただいた。
お話のテンポがちょうどよくて、ひとりで過ごしていると構ってくださった。目が合うと、にやっと笑って近くに来てくれて、ほとんどベルを鳴らすことはなかった。
本当に使用人を雇うなら、こういう空気感で過ごせる人がいいな。

シルヴィアスの由来が思い出せないとか、ペッパーミルが鈍器のようだとか、キングリアの蓋が熱かったとか……見た目は落ち着いているのに、子どもっぽくて可愛い。



後半、たまたまベルを鳴らすと、少し離れたところから金木さんが来てお茶を入れてくださったので、話し掛けてみた。



「金木さん、ですよね」
「はい、金木でございます。覚えていていただいて光栄です」
「覚えてますよ!初めて来たとき、ご担当いただきましたね」
「はい、あちらのお席で、ご担当させていただきましたね」



そこまで覚えていていただいて嬉しい!
その後いらした隠岐さんに、金木さんと隠岐さんはお勤めを始めて2ヶ月くらいと教えていただいた。

お化粧室の帰り、まだこの日お世話していただいてないフットマンさんに、席へ送っていただく。

お化粧室に立っている"お嬢様"は他にもいたので、



「お席よく覚えていらっしゃいますね」



と声をかけたら、



「お嬢様のお顔は忘れませんよ。
 ……長年お仕えしてきたではありませんか」



と、見上げるように微笑む。

うわぁぁこの方すごい!設定()完璧!
お名前どうして聞かなかったんだろう!次回の担当この方がいい!



その後も隠岐さんと紅茶の味についてにこにこ話していたら、「ご歓談中のところ…」と、時任さんのお迎え。



カップに残ったお茶をいただいていると、



隠岐はいかがでしたでしょうか」



と時任"執事"からのチェック。



「ええ、とてもよくしていただきました」
「左様でございますか。隠岐はまだ卵の殻も取れていない新人でございますので、至らぬ点もあるかと存じます。その際は遠慮なく仰ってくださいませ」



御髪のお手入れ大変でしょう、なんて話したかったけれど、それは次回に。



「外は少しですが雨が降っております。お散歩中は足元にどうかお気をつけて、お早いお帰りをお待ちしております」



今日は散歩なのね。



「いってらっしゃいませ」
ごきげんよう



初めて、ごきげんよう、と、笑って挨拶できた。





ドアマン:香川さん
執事:時任さん
フットマン:隠岐さん
お世話いただいた方:杉村さん、金木さん、お名前不明(黒髪オールバックで、痩せ気味のメガネの方)
お見かけした方:藤堂さん、嘉島さん、浅葱さん、百合野さん、風祭さん、杉村さん(他お名前不明)

お食事:キングリア
紅茶:シルヴィアス、フォンディエ(キームン縛り)
カップウェッジウッド クリムゾンオリエント、ハーレクイン(使いたかったカップ!)